当院の無痛分娩(硬膜外麻酔分娩)について
以下に、2019年2月8日に無痛分娩関係学会・団体連絡協議会(JALA)が行なっている「無痛分娩診療体制情報公開事業」に基づき、当院の無痛分娩診療体制に関する情報を記載いたします。
無痛分娩取り扱い施設のウェブサイトにおける「診療体制に関する情報公開」の内容について
⑴勤務医師数(2019年3月時点)
産婦人科医医師数 常勤医師数 2(うち1名は麻酔科標榜医)
⑵分娩実績数
2016年1月から12月 | 2017年1月から12月 | 2018年1月から12月 | |
分娩件数 | 485 | 470 | 514 |
非無痛経膣分娩 | 318 | 293 | 345 |
無痛分娩 | 83 | 94 | 53 |
帝王切開分娩 | 84 | 83 | 116 |
⑶無痛分娩に関すること対応方針とマニュアルなどの整備状況
ⅰ 妊産婦の本人希望による無痛分娩の受け入れ あり
ⅱ 無痛分娩の導入対象
原則として計画分娩を導入対象とするが、自然陣発の場合も導入の対象とする
自然陣発の場合は対応できる範囲(月〜金の日勤帯のみ)で対応する
ⅲ 鎮痛の方法 硬膜外麻酔
ⅳ 無痛分娩に関する標準的な説明文書 あり 資料参照(PDF)最終更新日 2019.2.20
ⅴ 無痛分娩マニュアル あり 資料参照(PDF)最終更新日 2019.2.20
ⅵ 無痛分娩看護マニュアル あり 資料参照(PDF)最終更新日 2019.2.20
⑷無痛分娩に関する設備及び医療機器の配備状況
ⅰ 麻酔器 なし
ⅱ 除細動またはAED AEDあり
ⅲ 母体用生体モニター(配備しているものを記載)
心電図、非間欠的自動血圧計、パルスオキシメーター
ⅳ蘇生用設備・機器(配備しているものを記載)
酸素配管、酸素ボンベ、 酸素流量計、 バッグバルブマスク、リザーバー付きマスク
喉頭鏡、気管挿管チューブ(サイズ6.5、7.0)、スタイレット、経口エアウェイ、吸引装置、吸引カテーテル
ⅴ緊急対応用薬剤(当院に常時配備しているもの)
アドレナリン、ドパミン、硫酸アトロピン、フェニレフリン、ジアゼパム、
プロポフォール、 硫酸マグネシウム、静注用脂肪乳剤(精製大豆油)、
酢酸加リンゲル液、生理食塩水、 アルドメット、ニカルジピン
⑸救急時の体制
当院で一次対応後、他施設との連携体制で対応いたします。
当院スタッフのNCPR、JCIMELS受講状況
ⅰ. NCPR資格保有者数 助産師 9名、看護師 5名
ⅱ. JCIMELS受講者数 助産師 5名、看護師1名
他施設との連携状況
重症母体搬送先医療機関名 函館中央病院、市立函館病院
重症新生児搬送先医療機関名 函館中央病院
⑹救急対応シミュレーションの実施 有り
記載内容
実施年月日
❶シナリオのテーマ、❷参加人数、❸訓練の具体的内容
2018年2月2日
❶アナフィラキシーショック ❷16名 ❸「母体急変時の初期対応」より抗菌薬によるアナフィラキシーショックの例を用い、シーン毎のシミュレーション、シナリオで想定されること、対処法、改善した方が良い点などについて質疑応答を行なった
2018年2月18日
❶記録なし ❷17名 ❸「母体急変時の初期対応」よりテーマを選び、シーン毎のシミュレーション、シナリオで想定されること、対処法、改善した方が良い点などについて質疑応答を行なった
2019年1月30日
❶常位胎盤早期剥離 ❷11名 ❸「母体急変時の初期対応」より常位胎盤早期剥離の例を用い、シナリオで想定されること、対処法、改善した方が良い点などについて質疑応答を行なった
2018年1月26日
心肺蘇生法練習用人形を用いた心臓マッサージ訓練
2018年5月11日
2018年3月になされた「無痛分娩の安全な提供体制の構築に関する提言」の内容を職員全体で共有し、今後当院の方針について検討
2018年5月24日
硬膜外麻酔の原理について。新たに作成した無痛分娩マニュアル、無痛分娩看護マニュアルの内容について職員全体で共有。新たに院内に採用した局所麻酔中毒治療薬「イントラリポス」の使用方法について確認。
2019年1月11日
心肺蘇生法練習用人形を用いたバッグマスク換気訓練(一人で行う方法、二人で行う方法)
上記以外にも適宜無痛分娩に関連した勉強会を実施
⑺無痛分娩麻酔管理者について
医師 遠藤 力 (産婦人科専門医)
無痛分娩実施歴
1978.~1986. 東北大学
1988.~1996. 福島県立医科大学
1997.1.~ えんどう桔梗マタニティクリニック
講習会受講歴
2011.8. NCPR(Neonatal cardio-pulmonary resuscitation)受講
2014.8. ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)受講
2017.11. J-MELS(日本母体救命システム)受講
2018.5. 日本産婦人科医会医療安全部会 硬膜外麻酔下での分娩を安全に行うために
⑻麻酔担当医について
医師 新垣加奈 (麻酔科標榜医、産婦人科専門医)
麻酔科研修歴
2003.10~2003.12. 市立札幌病院麻酔科
2005~2005. 6. 三井記念病院麻酔科
2006. 4~2008. 9. 社会保険京都病院麻酔科
無痛分娩実施歴
2014.4~2014.9 身原病院
2015.10~ えんどう桔梗マタニティクリニック
講習会受講歴
2003.6 ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)受講
2012.6.2-3 ALSO( Advanced Life Support in Obstetrics)受講
2013.1.18 NCPR(Neonatal cardio-pulmonary resuscitation)受講 有効期限2021年6月
2018.2.17 J-MELS(日本母体救命システム)受講 有効期限 2023年2月16日
⑼無痛分娩に関わる助産師・看護師について
ⅰ. NCPR資格保有者数 助産師 9名、看護師 5名
ⅱ. JMELS受講者数 助産師 5名、看護師 1名
⑽日本産婦人科医会偶発事例報告・妊産婦死亡報告事業への参画状況
ⅰ.日本産婦人科医会偶発事例報告への参画の有無 有り
ⅱ.妊産婦死亡報告事業への参画の有無 有り
⑾ウェブサイトの更新日時 2019年3月27日
文責 新垣加奈
<<無痛分娩Q&A>>
よく質問されることを、下記に載せましたので参考になさってください。
Q1.無痛分娩(硬膜外麻酔)とはどのような麻酔ですか?
A.硬膜外麻酔は局所麻酔の一つで、お腹や足の手術の後の痛み止めとして、よく用いられます。 帝王切開の手術の時に痛み止めとして使う病院もあります。 硬膜外麻酔の硬膜、というのは硬い膜と書きますが、背骨の奥にある脊髄という太い神経を囲んでいる膜のことです。その硬膜の外側に細いカテーテルを入れて麻酔の薬を入れるので、硬膜外麻酔と言います。入れたお薬は硬膜外を広がって脊髄に部分的に麻酔をかけます。 硬膜外無痛分娩の場合は、下半身にだけ麻酔が効くように調節します。 また、麻酔の効き方が強いとお腹や足の力が入りにくくなり、いきめなってしまいますので、なるべく痛みだけ取るように薬を調節しています。
Q2.「全く痛みがなくなるのですか?」
A.「無痛分娩」は、正式には「硬膜外麻酔分娩」と言います。「無痛」と呼ばれていますが、実際は痛みが完全になくなる方もいれば、痛みが少し残る方もおり、効き方には個人差があります。 少し痛みを感じるくらいの方が、陣痛に合わせてうまくいきむことができます。 そのため無痛分娩と呼ぶよりも、痛みを和らげるという意味で「和痛分娩」と呼ぶ方が、正しいのかもしれません。
Q3.硬膜外麻酔はいつ始めるのですか?
A.基本的には、自然に陣痛が来てから麻酔を行います。自然の陣痛を待つことで、妊婦さん一人一人に良いタイミングでお産を始めることができるからです。しかし、安全な麻酔を行うため、麻酔開始時刻は原則、平日の日中としております。そのため、無痛分娩を希望されていても曜日や時間帯によっては麻酔ができませんので、ご了承ください。
Q4.麻酔を行うときはどのようにするのですか?
A.分娩台のベッドに横向きに寝ていただいて、膝を抱え込むようにして背中を少し丸くしてもらいます。そして背中を消毒薬で拭いて清潔にします。 それから、背中の腰のあたりに細い針で痛み止めをしてから、少し太めの針を使って硬膜外という場所に細いチューブ(カテーテル)を入れます。 入れるのにかかる時間は10分程度です。
Q5.麻酔がかかっている間はどのような状態になるのですか?
A.麻酔が効くのは下半身だけですので、もちろん意識はありますし普通に会話ができます。赤ちゃんへの影響もほとんどありません。 無痛分娩を始めても下半身の感覚は残りますので、子宮が収縮してくるのを感じながらタイミングを合わせていきんでいただきます。 ほとんどの場合、痛みはわずかに感じるだけになりますが、痛みの感じ方は人によって違いますので、とくに出産間近になると生理痛くらいの痛みを感じる場合があります。意識も普通にありますし、もちろん赤ちゃんが生まれるのもわかります。
Q6.硬膜外無痛分娩で何か副作用はありますか?
A.現在、特にアメリカやヨーロッパではたくさんの無痛分娩がされていますが、その中で重い合併症はとても少ないと言われています。 比較的起こりやすいものとしては、血圧が下がる、背中の注射した所にしばらく痛みが残ることがあります。まれな合併症には麻酔のカテーテルからの感染、頭痛、麻酔が強く効いて全脊椎麻酔となる、などがあります。
Q7.硬膜外無痛分娩が赤ちゃんや分娩経過に何か影響を与えますか?
A.いいえ、赤ちゃんに麻酔薬の影響はほとんどなく、生まれた時の赤ちゃんの元気さも変わりません。お産の経過に対しては、いきむ力が少し弱くなることがあるため吸引分娩、子宮底圧出法を行う分娩が増えます。
<<無痛分娩(硬膜外麻酔)の歴史と現状>>
無痛分娩はいつ頃から始まったのですか?
無痛分娩は、イギリスのヴィクトリア女王が1853年に行ったのが世界で初めてと言われています。
この時は麻酔薬を吸入して痛みをとったようです。
それまではお産の痛みを取ることは罪だとされていましたが、エリザベス女王のお産をきっかけに一般の方々にも無痛分娩が普及していきました。
1940年代からは硬膜外麻酔が無痛分娩に用いられるようになって、安全で良い麻酔ということで徐々に無痛分娩の主流になりました。 日本ではどうかというと、最初の無痛分娩は、1916年に歌人の与謝野晶子が息子さんのお産をするときに医療用麻薬を使って行った、との記録があります。 硬膜外麻酔による無痛分娩(硬膜外無痛分娩)は1970年代から行われるようになって、海外と同様、今は無痛分娩の主流になっています。
現在はどれくらいの妊婦さんが硬膜外無痛分娩を行っているのでしょうか?
アメリカやフランスでは硬膜外無痛分娩を選ぶ妊婦さんが多く、アメリカの2008年のデータでは全体の約6割、フランスの2010年のデータでは約8割の女性が無痛分娩をしています。 日本では、2017年に日本産婦人科学会が発表した調査では6%であり、少しずつ無痛分娩を受ける妊婦さんは増えてきています。
ウェブサイトの更新日時;2018.5.7